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魔物嫌いの魔食家令嬢
魔物嫌いの魔食家令嬢
Auteur: 結城 木綿希

#1 地龍はクソですの!

last update Date de publication: 2025-06-29 11:00:00

「カハッ……絶体絶命ですわね。でもわたくしはまだ死ぬわけにはいけませんの!」

龍種は魔法の行使を妨害し無効化する効果のある鱗を持つ。故に龍種は魔術師や魔剣士などの職業対して絶対的な優位性を持つため、物理でのゴリ押し一択なのだ。私が勝てない相手を処理できる剣士は剣聖様くらいだろう。そして唯一可能性のある剣聖様は悪名高きベヒーモス討伐時に負った怪我の療養中で万全ではない。

「ここでわたくしがやられてはこの領、ひいてはこの国が終わる!(チクチクちょっかいを出してくる隣国のことなんてもう知りませんわ!)こうなったら相打ち覚悟でいくしかありませんわね。剣姫の称号を持つものとして!王国の剣たるルミナリア辺境伯家の長女として、ここで負けるわけにはいきませんもの!」

◇◇

鍛え抜かれた肉体も磨き続けた剣術も……全てが圧倒的な暴力の前には無力だった。すでに体内の魔力が一割を切っている。そんな状況では身体強化魔法を行使するための魔力もいつ尽きるかわからない。魔力が尽きてしまえばあとはこの龍に蹂躙されるのみ。

龍、それは神話の時代にも存在したこの世界最強の一角である。姿こそバラバラではあるものの共通するのは天を駆けること、何らかの属性のブレスを吐くこと。そして、強いこと。

同じ読みをする竜とは文字通り格が違うのである。画数の画と強さの格を掛けた訳では無いです、はい。

剣術の名家ルミナリア辺境伯家の長女、剣姫アビゲイル=ルミナリアといえど魔力が尽きればただの人間。戦闘力も近衛騎士団長クラスまで落ちてしまう。本物の怪物、まして連戦後ともなれば手に余るのだ。

「こんなことになるのならちゃんと好き嫌いせずに魔物を食べておけば良かったですわね……」

魔物食、それは一部の部族でのみ行われている肉体改造を目的とした特殊な鍛錬法である。この鍛錬法は魔力を持つ者を倒した際に行われる魔力吸収現象をより効率良く行えるとされており、倒した対象の魔力を余すことなく自らの力に出来る。その部族は少数ながらも圧倒的な武力を誇るという。

では何故そんな夢のような鍛錬法が普及しておらず一部地域でしか行われていないのか。それは単純に毒だからだ。魔物の纏う魔力は瘴気とも呼ばれ、多く浴びると一定時間身体の機能を阻害するのだ。食べて体内に取り込めばどうなるか言うまでもないだろう。そう、修練の効率が落ちるのだ。

普通に狩っていれば、身体に入ってくるのは有害な瘴気ではなく純粋な魔力のみを取り込める。汚染された魔力である瘴気すらもおのが力に変えようというのがこの魔物食である。

とある異界人は言った。「強くなるには魔物を狩るのが手っ取り早いってのにこんなデバフ食らってちゃ効率が悪ぃ」と。

あと普通に魔物が美味しくない。筋肉質で硬く生臭いお肉。討伐後すぐに血抜きをすれば多少マシになるとはいえ魔物の生息地においては難易度が高すぎる。

無論、この理由だけで普及しないわけではない。最大の理由は……宗教だ。

世界最大の宗教、レギウス聖教会。その教義には「魔物は全人類共通の敵であり、排除されるべき物である。また、魔物は不浄な生命であるため触れた場合は即刻教会にて浄化すべし。」とある。

国ですら無視できない程の信者数と影響力を持つレギウス聖教会が不浄な物であるとする魔物。それを食べる鍛錬法など普及するはずがない。

もっとも、彼女が魔物を食べなかったのは魔物が美味しくないからであって宗教云々は関係ないのだが。それに彼女に天賦の才があった。

学生時代は彼女より強い者もいたが、それでもたゆまぬ鍛錬の末に最終的には全て勝ち越してきた。だから彼女は魔物なんて美味しくないものを食べる必要などないと思っていた。

この日、命の危機に瀕するまでは……

今まではその考えでも問題がなかった。格上と戦う時はいつも命の保証がされたもう1回がある戦い。魔物を相手にする時も深入りせず、常に安全マージンを大きく取っていた。

だが、どんなに気を付けていてもイレギュラーは起こりうるのである。

ルミナリア辺境伯領に接する森林は魔物の領域だ。その魔物の領域、通称魔窟に生息する魔物であれば何体いようともアビゲイルの敵ではない。

並の戦士では一体相手にフルパーティでやっとなのだが、そんなことアビゲイルには関係ない。剣姫の肩書きは伊達ではないのである。

「さすがに龍相手だとわたくしでも無理そうですわね。魔力不足で火力が足りないですし。とはいえわたくしがこの領の最高戦力。みすみすこの先に行かせる訳には行きませんわ。わたくしが止めれなければお父様やお兄様が相手をするしかないですけれど……あの二人では龍の相手が務まりませんわね。となるとわたくしが相打ち、もしくは撃退する必要がありますわね。はぁ、どうしてよりにもよって地龍が……。」

◇◇

唯一の地龍の討伐パーティの愚痴

「地龍の特徴は堅い、重い、遅い。堅いくせにバカスカ質量攻撃してきやがって……意味わかんねぇよ!ナーフしろナーフ!」

「クソ堅い敵を相手に弾幕ゲーしながらチマチマ攻撃して体力削り切れって?馬鹿じゃねぇの?難易度バグりすぎ!クソゲーかよ!」

「もうヤダ二度と戦わん。依頼料に釣られてこの仕事受けたけど、もうやらん二度とやらん。」

「もう私冒険者やめようかな……。」

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  • 魔物嫌いの魔食家令嬢   #54

     落ち着きなさいアビゲイル=ルミナリア。イラつけばその分だけ魔力の制御が雑になってしまいますわ。「すぅ〜はぁ〜。よし!わたくしが殺るべきことはただ一つ。ひたすら攻撃ですわ!鱗が砕けるまで攻撃し続ければ砕けますもの!そしてその後は奴が死ぬまで攻撃ですわね!死ぬまで殴れば死にますし。これぞまさしく頭脳プレイ!やはりわたくしは天才ですわ!脳が冴え渡ってますもの。」 誰も信じてくれないだろうが一応彼女の名誉のために説明しておくと今の彼女は久々の強敵を前に少々?いやだいぶかなり興奮し過ぎていた。そのせいでもうアドレナリンがドッバドバである。それもあってだいぶ頭がゆるゆるになってはいるものの一応選んだ方法は脳筋ではあるものの最適解であった。 いや、もちろん本来であればこの場合撤退すべきではある。これはそれをせず戦う場合の話である。 最適解というより他に方法がないという方が正しい気もするが最適解は最適解である。全身鎧のせいで攻撃出来ない。ならば鎧を砕くしかないのである。 前言撤回をしよう。ただの脳筋である。「アハハハハハッ!当たりませんわねそんなヌルい攻撃!あなたそれでも龍なんですの?そーんな遅い攻撃しかできない上にわたくしの攻撃を躱せもしないだなんて、ただの龍の形をした頑丈な的ではありませんか。」 アビゲイルの煽りが止まらない。今日も今日とてキレッキレである。「あら、ご自慢の鱗にヒビが入ってしまいましたわよ?あらあら今頃焦っていますのね、もう遅いというのに。お可愛いこと。」

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  • 魔物嫌いの魔食家令嬢   #50

    「だいたいコツを掴んできましたわ。さてと、そろそろ反撃開始と……いきましょうかぁ!」 にしても誰もわたくしのこと心配してらっしゃらないわね。それだけわたくしの強さを信頼しているということなのはわかっているのですが……なんか寂しいですわ。やはりわたくしも一人の乙女ということですわね。 白馬に乗った王子様とまでは高望みしませんわよ?でも、たまには「君の強さはよく知っている。それでも不安なんだ。君がかすり傷でも負ったら!こんなとき、ただ見ていることしかできない無力な我が身が憎いよ。私も男だからね、好いた女性のことを守りたいんだよ。」とか言われてみたいですわ。「……わたくしって妄想の中の王子様にもかすり傷しか負わないと思われてますのね。あなたの身に何かあったら!とかじゃないんですのね。虚しくなってきましたわ。」 まぁ、実際この重りに傷を付けられたら魔法の効率が下がって瞬殺してしまうんですけれどね。わたくしの付与の腕が未熟というのもあるんですけれど、ギッチギチに詰め込んだせいか魔法の構造が少々弱くなってしまっているんですのよね。 攻撃を喰らえば喰らうほど強くなるという……。そのうえ全身を被っている関係上重りの方が傷付きますし。あぁ、わたくしには過ぎた願いだったのでしょうか……。 世知辛いですわね。そもそも同世代と話す機会がないせいで友人が……この話はここらでやめておきますわ。負けが決まっている勝負なんてするだけ無駄ですもの。

  • 魔物嫌いの魔食家令嬢   #49

    「これは!マジで!やっべぇですわぁ!逝く!逝っちゃいますわ!みゃーーー!!!」一般人視点再び!「えっとアビゲイル様は何やってるんです?」「荷重トレーニング……らしいぞ?一応……。」荷重トレーニング:筋肉に対して通常以上のより高い負荷をかけることができる。そのため、自重トレーニングに慣れた人がさらなるレベルアップを目指す場合に最適。また、効率の良いフォームの獲得にも効果的。トレーニング効果の実感という意味でも、荷重を取り除いた際に身体が軽く感じられ、スピードや跳躍力の向上を実感しやすいため効果的。みんなもやろうぜ筋トレ!まずは自重トレーニングから!無理は禁物!休息日も忘れずにな!作者との約束だぜ!|閑話休題《それはさておき》「違うそうじゃない!なんであの人あんなもん身体につけて竜の巣突っ込んでるんですか!さすがに死にますて!」「アハハハっ!アイン殿は心配性だなぁ。"スンッ"あれが死ぬように見えるのか?」「アハハハハハッ!久しぶりにヒヤッとさせられましたわ!やはり修練はこうでなければいかけませんわね!燃えてきましたわよぉ!」「見えませんね、はい。」「にしても凄いよなアビゲイル様は。ご自身で全力の付与を施してガチガチに硬く重くしてるらしい。その重さで攻撃力が上がってしまうからと、この為だけに独自で攻撃時に装備者から魔力を奪って相殺する魔法を開発したらしいぞ?」「いや、もうそれ呪いの装備じゃないですか!」「あの方はどこまでも規格外だ。だが……いや、だからこそ我々は強くあらねばならぬのだ。あの方が何と戦おうとしているのかを無学故知らぬ。知らぬが、あの方がその敵と戦う時にただ守られるだけの無力な存在いる訳にはいかぬのだ。隣に立てるようになるとまで自らを過大評価していないが、あの方がなんの憂いもなく戦えるように場を整えるのが我ら騎士団の役目と考えている。故に、アビゲイル様を頼むぞ。アイン。」「この命にかえても。まぁ、現状まだまだ程遠いんですけどね。アハハハッ。」

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